これもよく耳にする言葉ですけど、
実際のところは「見かけ」通りの人ばかりですよねぇ。
ところが今日の帰り道の出来事です。
日比谷花壇の前の横断歩道。
信号待ちをしていると後ろから突然呼び止められました。
「ちょっと、すみませんが、今ここはどこですか?。」
あまり聞き慣れない質問です。
いぶかしげに振り向いてみれば、
植え込みの方に向いて、
まるで独り言を言っているかのような、
白い杖をついた老人でした。
頭には黒ずんだタオルで鉢巻。
ごま塩の無精ひげ。
くたびれた染みだらけのゴルフシャツと、
線など全くないヨレヨレのスラックス。
手にはイボイボの軍手を着けています。
ちょっとびっくりしましたが、
どうにか現在地の説明をしました。
「申し訳ありませんが帝国ホテルに行きたいんで、
横断歩道を渡らせてください。」
断る理由はありません。
『万一、電車賃でも貸してくれなんていわれたら、その場でさっさと逃げちゃおうっと。』
「ありがとう。ありがとう。」
と、何度も何度も感謝されながら、
イボイボの軍手にグィっと腕を捉まれて、
その横断歩道を渡りました。
ただ帝国ホテルに行くためには、
もう一回横断歩道を渡らなくてはなりません。
またたとえここを渡れたとしても、
この様子ではとても玄関に辿り着けそうにありません。
「玄関まで送りますよ。」
ここまで付き合ったらもう一緒です。
まだ目が不自由になって間もないのか、
有楽町の駅から長い時間迷いつつ、
あそこで困り果てていたそうです。
私の他は誰も助けてくれなかったそうですが、
この格好では無理もありません。
私が親切なわけじゃないですよ。
ごめんね、爺ちゃん。
私は不意打ちだっただけ。(笑)
ところでこのお爺ちゃん、
『帝国ホテルの中に入れさせてもらえるだろうか?』って、
心配しながら二人でトボトボ歩いていると、
何度も何度も私への感謝と、私の健康を祈る言葉の後に、
突然こう言い出しました。
「ボーイがいたら呼んでください。
後はボーイが連れてってくれますから。」
『はぁ??、え?、どこに?裏口かい?。』
ちょうどそのやりとりをみていた一人のボーイさん。
こちらに猛ダッシュでやってきました。
『ほーら、いわんこっちゃない・・・。なんか文句を言いに来たのかなぁ??』
「先生、いつも大変お世話になっております。
いつもご利用頂き、誠にありがとうごさいます。
先生、今日はなにか取材でいらっしゃいますか。」
他のボーイさんもベルさんも大集合して、
この爺ちゃんを歓迎しています。
ほぇ。はぁ〜。
職業柄、ホテルマンの応対には見慣れていますが、
この応対は、よほどの常連かVIPに対するもの・・・。
私の腕からもぎ取られるように、
ボーイさんに連れていかれたお爺ちゃん。
振り返って私を探しているかの表情をしていましたが、
あんまりびっくりしちゃって、
そのまま、そこを後にして帰りました。
ところでお爺さん、
あんた、なにモン??。
← ポケモンじゃないことは確かです。