「神様からひと言」

神様からひと言 (光文社文庫)

神様からひと言 (光文社文庫)




アホな会社と、無能な上司に仕えるサラリーマン・・・。
そのストレスは積もるばかり・・・。
あ〜やだやだ・・・。




・・・と、そんな不満をブーたれているばかりの私ですが、
この小説は本当に面白くて、いっぱい笑って、
スキっと元気をもらい、感動にウルってさせてもらいました。





この小説に登場するクレーム処理のスペシャリストは、
主人公の「会社っていったい何でしょう」という問いに対して、
こう答えています。

「おでん鍋といっしょだよ」

「ほら、狭いとこでぐつぐつぐつぐつ煮詰まってさ、部長だ課長だ役員だなんて言ったって、しょせん鍋の中で昆布とちくわが、どっちが偉いかなんて言い合ってるようなもんだ。考えてみ、このおでん屋じゃ牛スジが一番高くて偉そうだけど、他の食い物屋へ行けば使っちゃもらえない。こんにゃくはここじゃ安物だけど、味噌田楽の店にいけば堂々のエリートだよ。」

ちくわぶは言ってみれば専門職。天職を見つけたやつだな。よそには行けないけど、おでんの中では存在感を示すことができる。似ていても、ちくわはよそにも転職が可能だ。そう考えてみれば、簡単だろ。お前がこのじゃがいもだとする。おでんの中なら、ただの平社員だ。でも肉じゃがの皿の中なら共同経営者だよ。じゃがバタなら押しも押されぬ社長。社員はバターと塩だけだけれどな」

ごもっともです。おっしゃる通り。
自分はおでんのなんなのか、真剣に考えてしまいましたよ。
少なくとも「ちくわぶ」ではないなぁ。





いろんな具をいれなくっちゃ、おいしいおでんにならないんですよね。
大根なんて人気があって偉そうですけど、
他の具からダシをもらっただけですもんねぇ。
ですから、会社の社員全員がブラインドタッチが出来て、
英語がしゃべれるようになる必要なんてまったくないんですよ。




もうひとつ。登場人物の珠玉な言葉。
ホームレスまで経験した頑固なラーメン店店主が、
人生についてこう語ります。

「一度ホームレスを経験すると、思うよ。少なくとも、まだこの国じゃ餓死するこたあないってね。俺の勤めていた会社には、外国で橋を作ってて、地雷踏んづけて死んだヤツがいるもんね。(中略)まぁ、何をやろうが死にゃあしないって。怖がることはねぇ、新宿の地面にゃ地雷は埋まってないってな」


日比谷にも地雷は埋まってません。





台詞使いの上手い小説家って本当に面白い小説を書きますね。
こりゃ、この人の他の小説も絶対に面白いはずですから、
昨日買った六冊に加え、デビュー1、2作の、

オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)

オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)

なかよし小鳩組 (集英社文庫)

なかよし小鳩組 (集英社文庫)

も、購入。全九冊が右上の写真です。
発表された順番に読んでいこう。




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