西國三十三所順打ち巡礼記

旧・元【東京】江戸御府内八十八ヶ所順打ち巡礼記【遍路】

浅田次郎マイブーム その六 

実籾本郷公園





浅田次郎マイブーム その → 



今日は実籾本郷公園で、
子供達とキャッチボール。
明日はおそらく筋肉痛ですが、
なんだかちょっと、
慢性的な肩こりが、
わずかに和らいだような気もします。




憑神 (新潮文庫)

憑神 (新潮文庫)

さてさて、浅田次郎さん。
文庫化最新作の「憑神」もさすがです。
完成度も高く、映画化されても、
その面白さは失われることはないでしょう。
でもなんだかちょっと優等生になっちゃったかな。



さて私のこのマイブームも、
文庫化されている作品は、残念ながら、
ついにこちらが最後になってしまいました。
ほぼ初期の代表作。
悪漢小説(ピカレスク)の金字塔とい称される、
「きんぴか」三部作です。

三人の悪党―きんぴか〈1〉 (光文社文庫)

三人の悪党―きんぴか〈1〉 (光文社文庫)

血まみれのマリア―きんぴか〈2〉 (光文社文庫)

血まみれのマリア―きんぴか〈2〉 (光文社文庫)

真夜中の喝采―きんぴか〈3〉 (光文社文庫)

真夜中の喝采―きんぴか〈3〉 (光文社文庫)




「泣かせ屋」と呼ばれる浅田さんですから、
毎回、うるるっさせられますが、
プリズンホテル 1 夏 (集英社文庫)プリズンホテル 2 秋 (集英社文庫)プリズンホテル 3 冬 (集英社文庫)プリズンホテル 4 春 (集英社文庫)
「プリズンホテル」同様に、
こちらもドタバタ喜劇の扱いを受けていますけれど、
私が電車の中で本当に「目の幅涙」を流してしまったのは、
実は、この初期二作です。
とにかく台詞がいいんです。
人生訓となる三つを紹介。




鉄砲玉のピストルの健太、ピスケンが、
インチキ宗教に騙されている信者にこう言います。

「やいオヤジ。頼んでどうかなるほど人生は甘かないぞ。
合わせたその手で働きやがれ」




「いいかおめえら。
こうして下せえって拝んでいるうちは、どうにも変りゃしねぇ。
こうすっから見てて下せえと神仏に誓って、初めて変るてえもんだ。
人生そんなもんだぜえ」


さえない容貌の中年医師で、
「養子の後添い」の尾形清。
実は「裏町の聖者」「現代の赤ひげ」なんですが、
妻子はそれを知りません。
血のつながらない息子に継父は、
種痘の発見をしたジェンナーの話をします。
天然痘の抗体をまずわが子に植えつけたあの有名な話です。

「その人が偉人と言えるかどうか、ぼくには良くわからないな」




「人類のためにわが子を犠牲にしたんですよ。偉いじゃないですか」




「そうかなあ──本当に偉い人は、
我が子のために人類を犠牲にする人じゃないかと思うけど、
違う?パパ」




「あくまで主観だよ、パパ。
つまりぼくはお父さん(実父)よりもパパ(尾形)が好きってこと。
ジェンナーがぼくの父親だったら、たぶん軽蔑するな」

収賄事件の罪を被った頭脳明晰な元・官僚の広橋秀彦が、
単身クーデターを起した元・自衛官の「軍曹」にこう言います。
この広橋は、上の尾形の息子の実父です。

「キミはいいな。
ぼくを必要としている人間なんて、もうどこにもいやしない」




「広橋秀彦。俺は今、一億国民と二百万英霊になりかわって、
キサマを殴る。メガネを取れ。歯を食いしばれ」




広橋が素直にメガネを取ると、
目の覚めるような鉄拳が頬を叩いた。
張り倒されて仰ぎ見た夜空に、軍曹はのそりと立った。
鼻血が生温かく口腔を満たした。




「世の中に不必要な人間など一人もいはせん。
それが不必要だと言うのは、己のわがままだ。」


参りました。




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