「孤愁の岸」(上・下)


孤愁の岸(上) (講談社文庫)

孤愁の岸(上) (講談社文庫)

孤愁の岸(下) (講談社文庫)

孤愁の岸(下) (講談社文庫)




元"薩摩おごじょ"であった義母に、
この本を薦められ読みました。



もちろんこの作品も、
この著者の杉本苑子氏の存在も知っておりました。
吉川英治氏に師事して、この作品で直木賞を受賞した杉本さん。
偏見であることを承知して書きますが、
どうも女性の描く歴史小説が面白かったという過去例がなく、
今までずっと敬遠しておりました。(時代小説は除きます。)



しかし、これ、読んでみると、
とても女性の作品とは思えぬほどに、
ドラスティックであって、
また女性ならではの、
細やかな心情もおさえている・・・。



登場人物があえて薩摩訛りにこだわらず、
また一部に歴史公証を無視したかのような台詞回しもありますが、
これは杉本氏は分かった上で用いていることなのでしょう。



ところで、この作品のモチーフの、
宝暦治水事件をご存知ですか。




→ 宝暦治水事件 - Wikipedia




参考にこのウィキをリンクに貼りますが、
要するに、江戸時代中期のこと、
その財政弱体化を図る為に、
無理矢理、幕命により、
木曽三川の治水工事の"御手伝"を押し付けられた薩摩藩
借金と苦労を重ねながらも治水をどうにか完成。
しかしこの際の多額の借金と、
藩士52名の自害と病死33名という甚大な犠牲を払った薩摩藩は、
この恨みを、関ヶ原とともに絶えず忘れずに時は過ぎ、
幕末に討幕運動の機動力となったとも云われているのです。





この"恨み"、"怨み"が、この小説では、
怖ろしいまでにリアルに表現されているので、
やはり鹿児島出身者の共感を生むものなのでしょう。





ともかくとても興味深い作品です。





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