「利休にたずねよ」


→ 「雷神の筒」



入院読書の第一本目は、
この「雷神の筒」を読んで以来、
ずっと読みたかった山本兼一氏の、
直木賞受賞作のこちらです。
普段であれば文庫化を待つところですが、
入院に備えて買ったハードカバーの一冊です。



利休にたずねよ

利休にたずねよ



作品中の黒田官兵衛の台詞ではありませんが、
私も若い頃は、茶の湯などには、
まったく興味のかけらもなく、
千利休なんぞ小賢しい茶坊主という偏見がありました。



しかし年を重ね、四十にもなると、
ところところで、名物とよばれたものや、
優れているという茶室を観てみると、
侘び寂びとよばれるものの良さをDNAが感じ、
茶室の狭さには、子供の頃に好んで作った、
ダンボールや古畳の「秘密基地」にも似た、
懐かしい安堵感を抱かずにはいれらません。



さて、この作品。
ありそうであまり多くなかった、
千利休を主役とした小説。
まず、文体と構成が美しい。
おまけに装丁も美しい。
そして、読み終えてまた、
題名が美しい。秀逸です。




切腹の間際、最愛の妻がありながら、
若き日の清く激しい恋を内心に抱きつつも、
身悶えすることなく、天下人秀吉に額ずかず、
己の美学の為に、死を賜る人間利休。



利休にたずねるのはいったい何か。
そして、誰か。




もちろん茶とは、侘びとは、美とは、ということですが、
作品中、利休が秀吉に言う、
この言葉に鳥肌が立ちました。



「美しさはけして誤魔化しがききませぬ。
道具にせよ、点前にせよ、
茶人は、つねに命がけで絶妙の境地をもとめております。
茶杓の節の位置が一分ちがえば気に染まず、
点前のときに置いた蓋置の場所が、
畳ひと目ちがえば内心身悶えいたします。
それこそ茶の湯の底なし沼、美しさの蟻地獄。
ひとたび捕らわれれば、命をも縮めてしまいます。」

やっぱり、茶道はオイラには無理だ。




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