「金の殿 時をかける大名・徳川宗春」(実業之日本社文庫)

→ 「超高速!参勤交代 リターンズ」(講談社文庫)
→ 「引っ越し大名三千里」(ハルキ文庫)
→ 「幕末まらそん侍」(ハルキ文庫)
→ 「超高速!参勤交代」(講談社文庫)







最近、新作が出れば必ず購入する、
脚本家・土橋章宏さんの、
書き下ろし文庫作品。




奇想天外な時代小説の多い土橋さん。
今回の作品は、あの第七代尾張藩主、
徳川宗春がタイムスリップをして、
現代の名古屋市に出現を繰り返し、
側用人の星野織部の子孫である、
少女・すずと未来を巡り、
あの政治宣言「温知政要」を著すという物語。
これまた、完全なコメディなんだけど、
ホント面白かったなぁ。




吉宗と宗春 (文春文庫)

吉宗と宗春 (文春文庫)




この海音寺潮五郎「吉宗と宗春」の影響もあり、
昔から徳川宗春はとても興味がある、
歴史上の人物の一人なんだけど、
このとても現代的な「温知政要」の発想は、
一体どんな経験から生み出されたものなんだろうと、
常々疑問には思っておりました。




こんな政治家に国を治めてもらいたいものです。
会社の経営者もね。。。


古より国を治め民を安んするの道は仁に止るる也とそ
我武門貴族の家に生るといへとも衆子の末席に列り
且生質疎懶にして文学に暗く何のわきまえもなかりし中
幕府衹候の身となり恩恵渥く蒙りしうへ
はからすも嫡家の正統を受續き藩屏の重職に備れり
熟思惟するに天下への忠誠を尽し先祖の厚恩を報せん事は
国を治め安くし臣民を撫育し
子孫をして不義なからしむるより外有まし故に
日夜慈悲愛憐の心を失わす万事廉直にあらん為
思ふるを其侭に和字に書付け一巻の書となして諸臣に附與す
是我本意を普く人にもしらしめ永く遂行ふへき誓約の證本なるうへ
正に上下和熟一致にあらん事を欲するか為に云
 享保十六辛亥三月中浣
 参議尾陽侯源宗春書

一、大きな愛と広い寛容の心で仁徳ある政を
一、愛に敵なし 権現様のように仁者であれ
一、冤罪は国の恥 罪科はとことん調べつくせ
一、継続は力なり 私欲に走らず、志を最後まで
一、学問の第一は愛情 小賢しい学問より自分自身に正しくあれ
一、適材適所 どんなものにもそれぞれの能力がある
一、好きこそものの上手なれ 他の者の心情を察するように
一、規制は必要最小限で良い 法令は少ないほど守ることができる
一、お金は活かして使え 過度な倹約省略はかえって無益になる
一、生かすも殺すも庶民の知恵 押し付けではなくまずは仲良く
一、ストレスなしが養生一番 怠けなければ心身ともに健康である
一、芸能は庶民の栄養 見世物や茶店などを許可する
一、先達はあらまほしきこと どんなことでも事情通であれ
一、芸道は偉大 あらゆる芸事を数年で身につくとは思わぬように
一、若者への諫言には若気の至りをもって 異なる意見は相手の年齢を考えて
一、失敗は発明の母 大器量の者でも若い頃は羽目を外すことはある
一、人の命は金では買えんぜ 生命は尊く、常日頃の用心が肝要
一、何事も庶民目線で 世間の事情によく通じ深い愛情を示せ
一、天下の政治は緩急自在で 国の改革はゆっくりと普段の用件は速やかに
一、改革は文殊の知恵で 自分ひとりではなく良き補佐が大切
一、「まぁええがゃぁ」が臣下に対する主君の心得。古参新参・男女等を問わず平等に深く愛情を示せ