「荒神」(新潮社文庫)

→ 「楽園」【上・下】 (文春文庫)
→ 「孤宿の人」(上・下)
→ 「ブレイブ・ストーリー」(上・中・下)
→ 「ぼんくら」(上・下)・「日暮らし」(上・中・下)
→ 「あかんべえ」(上・下)
→ 「模倣犯」(1〜5)
→ 「宮部みゆき」関連の記事






荒神 (新潮文庫)

荒神 (新潮文庫)





久しぶりに宮部みゆきさんの、
最新文庫化作品を手に取りました。





時は徳川綱吉の治世、
江戸は生類憐みの令に苦しむも、
太平の世である元禄年間、
表向きには主藩・支藩の関係にある、
東北の隣り合う小さな二つの藩。
実はこの二藩は、主従が関ヶ原で、
東西に分かれて成り立ったもので
今も国境の人の立ち入れぬ山を挟み、
常に啀み憎しみ合う関係にある。
ある日のこと、支藩の山村が、
一夜にして壊滅する事態が起こる。
支藩側は主藩の成り上がりの藩主側近、
曽谷弾正配下の牛頭馬頭の仕業かと疑う。
しかしその頃、村から逃げ延びた少年は、
主藩側の弾正の妹、朱音に助けられる。
介抱により傷が癒えて、
ようやく口がきけるようになった、
少年が語る村壊滅の真相は...。






何の予備知識もなく、
何気なく読み始めたもので、
宮部みゆきさんお得意の、
江戸人情モノか?、
はたまた時代劇背景の、
ミステリーかと思いきや、
・・・なんとコレ、、、
怪獣モノでございました。
それもいがみ合う人間が創り出し、
敵味方をも殺戮する、
モンスターという設定は、
原発事故の放射能であるとも、
核兵器であるとも読み取れます。
また人智を凌駕する圧倒的な存在は、
あの初代「ゴジラ」とも、
最近の「シン・ゴジラ」とも、
かなり近い世界観とも思えますが、
この作品の単行本の刊行は、
平成二十六年(2014)ですから、
シン・ゴジラ」よりも、
かなり前に書かれたモノです。
なんか影響受けてるんぢゃない?!






→ 映画「シン・ゴジラ」





・・・と、思ったら、
なんと文庫巻末の解説は、
その「シン・ゴジラ」の、
監督・特技監督樋口真嗣さん!!
この作品を絶賛して、
是非自分が映画化の監督をしたいと、
名乗りを上げています。
庵野秀明樋口真嗣のタッグで、
映画したら凄そうデス。
文庫の帯には、
NHKドラマ化決定!」
と、ありますが。
失敗するのは目に見えていますから、
絶対にヤメてください。
お願いします。




閑話休題
さて物語の芯になる部分には、
兄である弾正を「悪」とし、
妹の朱音を「善」として、
対象的に描かれていますが、
二つの藩の庶民・民草や、
幕府の隠密や、忍び・間者、
旅の浪人や他藩の絵師を通して、
「善政」「悪政」の相違、
そもそも「神」とは何か...。
「正義」とは「悪」とはと、
深く考えさせられる作品です。




今や偽経であると、
証明がされていますが、
クレヨンしんちゃんの父、
野原ひろしが言ったとされていた、

正義の反対は悪じゃない、
また別の正義なんだよ。

・・・や、「ドラえもん」第1巻、
8話「ご先祖さまがんばれ」で、
ドラえもん

のび太「正しいほうを助けなくちゃ。」
ドラえもん「どっちも、自分が正しいと思ってるよ。
戦争なんてそんなもんだよ。」

やなせたかし氏の、

アンパンマンバイキンマン
殺したりしないでしょ。
だってバイキンマンには
バイキンマンなりの
正義を持っているかも知れないから。

なんて、言葉を立て続けに思い出しました。