「黒澤明 DVDコレクション」5『天国と地獄』

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黒澤明 DVDコレクション」 
→ 1『用心棒』2『七人の侍』3『赤ひげ』4『椿三十郎』
→ 「黒澤明という時代」(文藝春秋)
→ DVD「生きる」・「赤ひげ」
→ DVD「羅生門」
→ DVD「姿三四郎」・「續姿三四郎」
→ DVD「一番美しく」
黒澤明監督作品と「スター・ウォーズ」シリーズ 
→ その一その二
→ 「黒澤明」関連の記事







『用心棒』『椿三十郎』の、
興業的な大成功の後に、
現代劇を構想していた黒澤明が、
エド・マクベインの警察小説、
「87分署」シリーズの、
『キングの身代金』を読んで、
触発されて映画化した作品ですが、
当時の刑法の誘拐罪に対する、
刑の軽さに対する憤りも、
その制作動機の理由の一つであったとか。
当時の劇場公開時のパンフレットにも、
誘拐を批判するコメントがあります。
しかし皮肉にも映画は、
興行的には成功しますが、
公開の翌月には誘拐事件が、
多発してしまいます。
今ならすぐに公開中止となるでしょうが、
映画の公開は中止されずに続行され、
これが国会でも取り上げられて、
昭和三十九年(1964)の刑法一部改正で、
「身代金目的の略取(無期または3年以上の懲役)」
を、追加するきっかけになったとか。
身代金受け渡しシーンは特に有名で、
ネタバレは書きませんが、
列車が酒匂川にさしかかるシーンで、
鉄橋脇の民家の二階部分が邪魔だった為、
撮影の一日の日の為に、
二階部分を取り払わせて、
後日復元させたという話は、
日本映画史上に残る、
黒澤明のこだわりを示すエピソード。
なお、身代金を入れたバックは、
大きさと丈夫さにこだわり、
あの吉田カバン創業者、
田吉蔵氏に特注依頼して、
製作されたものなんだとか。
また映画の設定は真夏ですが、
実際の撮影は真冬に行われたそうで、
俳優は息が白くならないように、
口の中に氷を含んで撮影に臨んだとか。
一見こだわりとは矛盾するエピソードですが、
「夏に夏のシーンでは俳優が油断する」という、
これまた黒澤明らしいこだわりがあったとか。
また、このモノクロ映画の時代、
本当は「椿三十郎」で、
ツバキのみを赤くしたかった黒澤が、
技術的に断念をしましたが、
この作品では煙突から立ち昇る煙を、
複雑な合成を経てたパートカラーで、
ピンク色に染めています。
この手法は後に黒澤明を師として仰ぐ
フランシス・コッポラが、
ランブルフィッシュ」で、
スティーブン・スピルバーグが、
シンドラーのリスト」で踏襲しています。