「かけおちる」(文春文庫)



→ 「鬼はもとより」(徳間文庫)
→ 「つまをめとらば」(文春文庫)





かけおちる (文春文庫)

かけおちる (文春文庫)




青山文平プチマイブーム三冊目。
発表順では創作活動再開後、
このペンネームになって、
二作目の作品。
後書きでご本人が語っていますが、
幕末の「尊王攘夷」や、
戦国の「下克上」には、
全く関心がないそうで、
こちらも「天下泰平」の、
十八世紀後半の江戸時代。
武家社会の存在理由が、
「武威」であるからこそに、
戦いを避けて暮らす中で、
武士にに生じる、
アイデンティティ・クライシス




二十数年前、
「欠け落ちた」妻と姦夫を、
妻仇討にした柳原藩執政の阿部重秀。
男手一つで娘を育てながらも、
出世の道をひた進み、
窮乏する藩財政を秘策により、
救済しようと奔走する。
財政再建に目処がつけば、
娘婿の阿部長英に後を譲り、
致仕を考えている重秀。
それには"ある事情"があった。




いや、なんだろうこの人の表現力。
またまた強く凛々しい女性と、
弱くも気高い武士の物語なんだけど、
この設定でこの強いリーダビリティ。
そしてこの結末で、
心地よい読了の後味。
ここまで読んだ三冊は、
いずれも最近読んだ小説の中では、
抜きん出た秀作揃い。
時代小説嫌いな人に、
是非読んで欲しい作家さん。




マジ、オススメっす。