→ 「伊賀の残光」(新潮文庫)
→ 「春山入り」(新潮文庫)
→ 「白樫の樹の下で」(文春文庫)
→ 「かけおちる」(文春文庫)
→ 「鬼はもとより」(徳間文庫)
→ 「つまをめとらば」(文春文庫)
- 作者: 青山文平
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2018/08/09
- メディア: 文庫
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すっかり大ファンになってしまった、
青山文平さんの最新文庫化作品は、
直木賞受賞後第一作の長編小説。
江戸時代中期、
戦国時代は領主と家臣だった武士も、
土着して帰農し、
「名主」となった殿様の家来は、
元武家とはいえ、小作よりも、
蔑まれていたという「名子」という身分。
この「名子」出身の夫と、
自分が「名子」出身であることを、
心に秘めたままの再縁の妻。
勘定所の普請役で真の武士に戻りたい夫と、
それを叶えさせたい妻。
己の「励み場」とは何か?
夫婦とは、家族とは何か?
過去の短編に少し似た設定があり、
その部分はすぐにピンと来てしまいましたが、
この小説は本当に素晴らしい傑作。
青山文平作品中でもピカイチですし、
最近読んだ本の中でも最も感動した作品。
語り口が美しく、人々が美しい。
「紫陽花はまだ咲いていた」
「もうすぐ、あのひとが還ってくる」
この「まだ」と「還って」に涙が止まりませんでした。