「みかづき」(集英社文庫)


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先日、妻が面白そうに観ていたこのドラマは、
どうやら習志野船橋八千代台を舞台に、
昭和から平成に至る間の、
学習塾の「津田沼戦争」を描いたものとか。
連続テレビドラマを観るのは苦手デスが、
自称"郷土研究家"のワタシですから、
コレは是非原作を読まねば。



みかづき (集英社文庫)

みかづき (集英社文庫)




原作は児童文学出身の、
我々夫婦より一つ年上の、
直木賞作家・森絵都さん、
子どもの頃やはりこの辺りに、
住んでいたことがあるとか。


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森さんの作品を読むのは、
この「カラフル」以来、
十数年ぶりですが、
児童文学出身らしく、
読みやすい正確な文法ながら、
しっかりと引き込まれてしまう、
さすがのリーダビリティ。


物語は東京五輪を三年後に控えた、
昭和三十六年(1961)から始まります。
習志野市内の小学校で用務員を務める、
大島吾郎は22歳。
家庭の事情で進学出来ませんでしたが、
勉強の教え方が天才的で、
多くの子供たちに慕われています。
この学校に娘・蕗子を通わす、
シングルマザーの赤坂千明は27歳。
戦争中の国民学校に疑問を感じ育った千明は、
教員免許を持ちながらも教師にならず、
吾郎をスカウトして、
学習塾を立ち上げる計画を立てます。
学校教育が太陽ならば、
学習塾は月のような存在になるという千明。
二人は昭和三十九年(1964)に、
八千代台に「八千代塾」を開塾。
吾郎と千明は間もなく結婚。
千明の母、頼子との同居。
義母は大久保のカフェーの女給出身で、
千明の父は戦死した裕福な将校でした。
蕗子の下に吾郎と血のつながった、
二人の妹、蘭と菜々美も生まれます。
さてここから現代へと渡る、
五十年の壮大な物語が始まります。




谷津遊園だの菊田神社だの、
花見川団地だのと、
地元の人間にはたまらない設定ですが、
学習塾などいうなかなか、
とっつき憎いテーマながら、
夫婦とは、家族とは、親子とは、
そして教育とはと、
とても考えさせられる内容で、
600頁を越える大作ながら、
夢中で読み終えてしまいました。
久しぶりに読了後すぐにに、
もう一度読み直してみようと思う作品でした。