日本百観音順打ち巡礼記

旧・元【東京】江戸御府内八十八ヶ所順打ち巡礼記【遍路】

「無私の日本人」(文春文庫)

無私の日本人 (文春文庫)

無私の日本人 (文春文庫)



読書の貯金ネタは、
まだまだ沢山あるんですが、
こちらの本を読んで、
久しぶりに感涙するほどに、
感動したもので、
感想の薄れぬうちにとどめます。



穀田屋十三郎、
中根東里、
大田垣蓮月


ほぼ無名のまま、
江戸時代の市井に埋もれていた三人を、
歴史家・磯田道史さんが、
古文書を丹念に紐解き、
紹介する人物評伝の三編。
この三名の偉人は、
自らが歴史に足跡を残すことすらを嫌がり、
無私を貫いたまま、
己の信じる道を貫き、
事をなします。



資料の少ない題材なだけに、
一人の作者の評価を、
そのまま鵜呑みにするのは危険ですが、
日本人がもっと愛する、
美しき日本人の姿がここにあります。


       

中根東里「壁書」


一 父母をいとをしみ、兄弟にむつまじきは、身を修むる本なり。本かたければ末しげし。
一 老を敬ひ、幼をいつくしみ、有紱を貴び、無能をあはれむ。
一 忠臣は國あることを知りて、家あることを知らず。孝子は親あることを知りて、己れあることを知らず。
一 祖先の祭を愼み、子孫の繁を忽にせず。
一 辭はゆるくして、誠ならむことを願ひ、行は敏くして、厚からんことを欲す。
一 善を見ては法とし、不善を見てはいましめとす。
一 怒に難を思へば、悔にいたらず。欲に義を思へば、恥をとらず。
一 儉より奢に移ることは易く、奢より儉に入ることはかたし。
一 樵父は山にとり、漁父は海に浮ぶ。人各々其業を樂むべし。
一 人の過をいはず。我功にほこらず。
一 病は口より入るもの多し。禍は口より出づるもの少からず。
一 施して報を願はず。受けて恩を忘れず。
一 他山の石は玉をみがくべし。憂患のことは心をみがくべし。
一 水を飲んで樂むものあり。錦を衣て憂ふるものあり。
一 出る月を待つべし。散る花を追ふ勿れ。
一 忠言は耳にさからひ、良藥は口に苦し。



所収の「穀田屋十三郎」を原作として、
中村義洋さんがメガホンを取り、
阿部サダヲさん主演で、
殿、利息でござる!」として、
映画化され、五月に公開されるとか。
ちょっと観てみたい気もします。