→ 「史実を歩く」
先日紹介した吉村昭氏のこの「史実を歩く」。
取材ノート的なエッセイ集なのですが、
すでに本編を読んだものは、
実に興味深かったものの、
『「破獄」の史実調査』だけは、
まだ本編を読んでいませんでした。
- 作者: 吉村昭
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1986/12/23
- メディア: 文庫
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ずっと探していたものの、
なかなか在庫がなくて、
ようやくブックオフで見つけました。
吉村昭氏は取材した関係者に遠慮してか、
登場人物をすべて仮名にしていますが、
これは、昭和の脱獄王とも呼ばれた、
白鳥由栄氏の壮絶な人生と、
戦前・戦中・戦後の、
日本の刑務所の実情を克明に描いた力作です。
昭和十一年(1936)青森刑務所、
昭和十七年(1942)秋田刑務所、
昭和十九年(1944)網走刑務所、
昭和二十三年(1948)札幌刑務所と、
日本犯罪史上二位の記録となる四度の脱獄を果した、
無期刑囚、白鳥由栄を、佐久間清太郎と名付けて描きます。
さすがは吉村昭さん。
時代背景の描写が絶妙で、
ぐいぐい佐久間の人生に引き込まれてしまいます。
脱獄回数では、白鳥の前に、
五寸釘寅吉こと西川寅吉の六回という記録がありますが、
西川の脱獄は明治・大正のことなので、
施設の強度がまったく違うので、
単純に比較することは出来ません。
西川は息子に引き取られ安らかな最後を迎えますが、
白鳥は独り寂しく世を去ったようです。
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