「春雷」(祥伝社文庫)


【羽根藩シリーズ】
第一弾 → 「蜩ノ記」(祥伝社文庫)
第二弾 → 「潮鳴り」(祥伝社文庫)





→ 「陽炎の門」(講談社文庫)
→ 「おもかげ橋」(幻冬舎時代小説文庫)
→ 「霖雨」(PHP文芸文庫)
→ 「銀漢の賦」(文春文庫)
→ 「螢草」(双葉文庫)
→ 「春風伝」(新潮文庫)
→ 「秋月記」(角川文庫)
→ 「無双の花」(文春文庫)
→ 「「いのちなりけり」「花や散るらん」(文春文庫)
→ 「柚子の花咲く」(朝日文庫)
→ 「川あかり」(双葉文庫)
→ 「葉室麟」関連の記事




春雷 (祥伝社文庫)

春雷 (祥伝社文庫)




ワタシは葉室麟さんは、
藤沢周平さんの再来のように思っています。
藤沢作品に海坂藩があったように、
葉室麟さんには羽根藩シリーズがあります。
この作品はそのシリーズの第三弾。



成り上がりの新参者、
多聞隼人が、
藩主を名君と為すために、
苛烈な改革を断行し、
”鬼隼人”と謗られるも、
胸には大きな”覚悟を”秘めて、
成すべきことを成す為に、
財政再建に欠かせぬ、
難しい黒菱沼開拓事業を、
家老昇任を条件に引き受ける。
大庄屋の”人食い”七右衛門と、
牢から学者の”大蛇”臥雲を集め、
難工事に挑むも、
反隼人派は策略で一揆を招き、
彼らを陥れようとする。



葉室麟さんお得意の、
藩内の権力闘争が渦巻く、
おどろおどろしい展開なんですが、
とにかく男が格好よく、
女が凛としていて清々しいんです。
そしていつも台詞がいい...。


わからぬであろうな。
おぬしとわたしでは
正義というものが違うからだ。
わたしにとっての正義とは
建前や理屈ではない。
ひとが何事かをなしとげ、
作り上げるために、
たがいに助け合うて、
苦しみを分かち合い、
ともに生きることだ。

おぬしの正義は
おのれの正しさを言い立て、
ひとを謗り、糺すものだ。
何も作ろうとせぬ。
あからさまに言えば、
何かをなそうとする者の
足を引っ張って快とするだけだ。
この世に何も作り出さぬ。

さて羽根藩シリーズ、
文庫化はまだこの三作のみですが、
単行本は第四弾「秋霜」と、
第五弾「草笛物語」が発売中。
この文庫既刊三作には、
ほとんど相互関係はありませんが、
「秋霜」には臥雲も登場し、
「春雷」の後日譚となっているとか。
「草笛物語」も「蜩ノ記」の結末から、
十六年後の話らしい。
う〜ん、楽しみ、楽しみ、
文庫化が待ちきれないかも。