西國三十三所順打ち巡礼記

旧・元【東京】江戸御府内八十八ヶ所順打ち巡礼記【遍路】

「黒澤明 DVDコレクション」10『蜘蛛巣城』

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黒澤明 DVDコレクション」 
→ 1『用心棒』
→ 2『七人の侍』
→ 3『赤ひげ』
→ 4『椿三十郎』
→ 5『天国と地獄』
→ 6『羅生門』
→ 7『乱』
→ 8『隠し砦の三悪人』
→ 9『生きる』




黒澤明監督作品と「スター・ウォーズ」シリーズ 
→ その一その二
→ 「黒澤明という時代」(文藝春秋)
→ DVD「羅生門」その一
→ DVD「生きる」・「赤ひげ」
→ DVD「姿三四郎」・「續姿三四郎」
→ DVD「一番美しく」
→ 「黒澤明」関連の記事









さて「蜘蛛巣城」は、
シェイクスピアの、
マクベス』の舞台を、
日本の戦国時代に、
置き換えた作品ですが、
作品の構成や、
人物の表情や動き、
撮影の技法には、
能の様式美を取り入れていて、
黒澤は撮影の前に、
三船敏郎に能面の「平太」を、
山田五十鈴には「曲見」を見せ、
この表情をそれぞれ、
謀反の場面と、
発狂の場面で求めたとか。
撮影もフルショットを多用して、
能のように全身の動作で、
感情を表現しています。




能面「平太」「曲見」




北の館の謀反を鎮圧した武将、
鷲津武時と三木義明の二人は、
主君・都築国春に召し呼ばれ、
蜘蛛巣城へと向かっていたが、
慣れているはずの道に迷い、
森で奇妙な老婆と出会う。
老婆は、武時はやがて、
蜘蛛巣城の城主になり、
義明は一の砦の大将となり、
やがて義明の子が、
蜘蛛巣城の城主になると告げる。
二人は笑いとばすが、
国春が二人に与えた褒賞は、
武時を北の館の主に、
義明を一の砦の大将に任ずるものだった。
武時から話を聞いた妻・浅芽は、
その予言を国春が知れば危ういと、
謀反をそそのかす。
国春は隣国の乾を討つ為に、
北の館へやって来る。
その夜、浅芽は見張りの兵士を、
痺れ薬入りの酒で眠らせ、
武時は眠っていた国春を殺す。
同行の臣下・小田倉は、
主君殺しの濡れ衣を着せられ、
国春の嫡男・国丸を擁して、
蜘蛛巣城に戻るが、
蜘蛛巣城の留守を預かる義明は、
開門せずに攻撃し二人は逃亡する。
義明の強い推挙もあり、
蜘蛛巣城の城主となった武時だが、
子がないために義明の嫡男、
義照を養子に迎えようとするが、
浅茅はこれを拒み自らの懐妊を告げる。




撮影は御殿場市内の、
富士山二合目、
太郎坊の火山灰地で、
御殿場市街地から見えたという、
巨大なオープンセットと、
2000人のエキストラ、550頭の馬は、
黒澤作品の中でも随一の規模。
三船敏郎演ずる武時が、
次々と矢を射かけられる、
ラストシーンは特に有名ですが、
編集やトリックはなく、
学生弓道部の部員が、
実際に三船の周囲めがけて、
本当に矢を射たもので、
三船から離れた位置に矢を射て、
遠距離から望遠レンズで撮影するなど、
黒澤なりに安全面を考慮したようですが、
三船は本気で恐怖を感じていたようで、
撮影前日は眠ることも出来ないほどで、
刀を持って黒澤が泊まる旅館の周りを、
「黒澤さんのバカ」と怒鳴りながら回り、
黒澤は「怖くて部屋に籠っていた」
とも語っています。
撮影終了後も三船は黒澤に、
「俺を殺す気か!?」と怒鳴り、
その後も、酒を飲んでいると、
そのシーンのことを思い出して、
散弾銃を持って黒澤の自宅前に行き、
「コラー!出て来い!」と叫んだり、
「黒澤の野郎、ぶっ殺してやる!」
と、頻繁にもらしていたとか。
現代なら確実に警察沙汰デス。