「黒澤明 DVDコレクション」10『蜘蛛巣城』

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黒澤明 DVDコレクション」 
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→ 5『天国と地獄』
→ 6『羅生門』
→ 7『乱』
→ 8『隠し砦の三悪人』
→ 9『生きる』




黒澤明監督作品と「スター・ウォーズ」シリーズ 
→ その一その二
→ 「黒澤明という時代」(文藝春秋)
→ DVD「羅生門」その一
→ DVD「生きる」・「赤ひげ」
→ DVD「姿三四郎」・「續姿三四郎」
→ DVD「一番美しく」
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さて「蜘蛛巣城」は、
シェイクスピアの、
マクベス』の舞台を、
日本の戦国時代に、
置き換えた作品ですが、
作品の構成や、
人物の表情や動き、
撮影の技法には、
能の様式美を取り入れていて、
黒澤は撮影の前に、
三船敏郎に能面の「平太」を、
山田五十鈴には「曲見」を見せ、
この表情をそれぞれ、
謀反の場面と、
発狂の場面で求めたとか。
撮影もフルショットを多用して、
能のように全身の動作で、
感情を表現しています。




能面「平太」「曲見」




北の館の謀反を鎮圧した武将、
鷲津武時と三木義明の二人は、
主君・都築国春に召し呼ばれ、
蜘蛛巣城へと向かっていたが、
慣れているはずの道に迷い、
森で奇妙な老婆と出会う。
老婆は、武時はやがて、
蜘蛛巣城の城主になり、
義明は一の砦の大将となり、
やがて義明の子が、
蜘蛛巣城の城主になると告げる。
二人は笑いとばすが、
国春が二人に与えた褒賞は、
武時を北の館の主に、
義明を一の砦の大将に任ずるものだった。
武時から話を聞いた妻・浅芽は、
その予言を国春が知れば危ういと、
謀反をそそのかす。
国春は隣国の乾を討つ為に、
北の館へやって来る。
その夜、浅芽は見張りの兵士を、
痺れ薬入りの酒で眠らせ、
武時は眠っていた国春を殺す。
同行の臣下・小田倉は、
主君殺しの濡れ衣を着せられ、
国春の嫡男・国丸を擁して、
蜘蛛巣城に戻るが、
蜘蛛巣城の留守を預かる義明は、
開門せずに攻撃し二人は逃亡する。
義明の強い推挙もあり、
蜘蛛巣城の城主となった武時だが、
子がないために義明の嫡男、
義照を養子に迎えようとするが、
浅茅はこれを拒み自らの懐妊を告げる。




撮影は御殿場市内の、
富士山二合目、
太郎坊の火山灰地で、
御殿場市街地から見えたという、
巨大なオープンセットと、
2000人のエキストラ、550頭の馬は、
黒澤作品の中でも随一の規模。
三船敏郎演ずる武時が、
次々と矢を射かけられる、
ラストシーンは特に有名ですが、
編集やトリックはなく、
学生弓道部の部員が、
実際に三船の周囲めがけて、
本当に矢を射たもので、
三船から離れた位置に矢を射て、
遠距離から望遠レンズで撮影するなど、
黒澤なりに安全面を考慮したようですが、
三船は本気で恐怖を感じていたようで、
撮影前日は眠ることも出来ないほどで、
刀を持って黒澤が泊まる旅館の周りを、
「黒澤さんのバカ」と怒鳴りながら回り、
黒澤は「怖くて部屋に籠っていた」
とも語っています。
撮影終了後も三船は黒澤に、
「俺を殺す気か!?」と怒鳴り、
その後も、酒を飲んでいると、
そのシーンのことを思い出して、
散弾銃を持って黒澤の自宅前に行き、
「コラー!出て来い!」と叫んだり、
「黒澤の野郎、ぶっ殺してやる!」
と、頻繁にもらしていたとか。
現代なら確実に警察沙汰デス。