「神々の山嶺」【上・下】(集英社文庫)

さてさて今日はまた電話番。
読書ネタも沢山溜まっているものの、
まだフレッシュな読んだばかりのこちらを紹介。





神々の山嶺(上) (集英社文庫)

神々の山嶺(上) (集英社文庫)

神々の山嶺(下) (集英社文庫)

神々の山嶺(下) (集英社文庫)





つい最近映画化が決定したそうで、
ホッコリさんのツイートをみて、
こちらの夢枕獏さんの山岳小説の古典(?)を読んでみました。




→ 「七人の役小角」
→ 「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」(1)
→ 「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」(2)〜(4) 





夢枕獏さんといえば、
餓狼伝」だの「魔獣狩り」は全くの苦手ですが、
安倍晴明を描いた「陰陽師」シリーズや、
彼の描く弘法大師空海は私の想像する超人像に近く、
少なからず嫌いではない作家さん。
その夢枕さんが山岳小説を書いていたとは、
今までまったく知らなかったので意外でした。






エヴェレスト初登頂に成功したかどうか、
不明のままであるマロリーのものかもしれない、
カメラを手に入れたうだつの上がらないカメラマン・深町。
カトマンドゥで、このカメラの出処を辿り調べると、
伝説の孤高の単独クライマー、羽生丈二と邂逅する。
前人未到のエヴェレスト南西壁冬季無酸素単独登頂を目指す羽生。
彼に同行することでその酸欠の極限状況下、
自らの人生の自問自答を繰り返す深町。。。




何度かこのブログにも書いておりますが、
私は母方の叔父がかなり本格的な山男だったもので、
彼がとても遅い結婚をして子供が出来る前までは、
その跡取り候補として、中高生の頃までは、
様々な日本を代表する山々に登りました。
遭難する一歩手前のようなことも度々ありましたが、
結局叔父は四十を過ぎて家庭をもうけ、
子供が次々と三人も生まれたもので、
私はまるで豊臣秀次の如く、
その山男の後継ぎを廃業し今に至ります。



→ 新田次郎の山岳小説
→ DVD「剱岳 点の記」
→ DVD「岳 〜ガク〜」




そんな訳で、若い頃から、
新田次郎の山岳小説など、
かなりハマって読み尽くしておりましたけれど、
この小説の登山家の自問自答のような、
さの綿密な表現力はとても素晴らしい。。。



人生にも天候がある。
人は、生きている時に出会う様々なものに、
全て、ひとつずつ結論を出して生きているわけではない。
多くは、そのままひきずって生きてゆく。
生きてゆくということは、何かしらをひきずってゆくことなのだ。






さて実際そのマロリーの遺体は、
この小説発表後に発見されておりますが、
今もそのカメラは不明のままです。
エベレストには今も多くの登山家の遺体が、
全く腐敗せずにそのままそこに残ったまま、
後世、後続の登山家たちを導いているそうです。