藤沢氏のお得意といえば人情物を中心としたフィクションの「時代小説」。
しかし数は少なくとも実際の史実を骨子にして書いた「歴史小説」ももちろんあります。
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「百姓たりといえども二君に仕えず」
の旗に掲げた荘内領民達の義民一揆。
しかしそれを単なる美談とせずに、
彼らの私欲を浮き彫りにした上で、
このここまでの心地良い感動は流石の一言。
![回天の門 (文春文庫) 回天の門 (文春文庫)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51Ph8IoFwlL._SL160_.jpg)
- 作者: 藤沢周平
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「策士」清河八郎。
幕末を語るとき彼の名は必ず登場しますが、
当時の倒幕・佐幕の両側からも、
また、現在もなお彼は悪評の歴史のなかにあります。
墓は文京区の伝通院。ほんの小さな粗末な墓石。
親友の山岡鉄舟が、暗殺されてもぎ取るように隠した首を匿って、
家の近所のこの寺に無理を言って建てたものだと聞きます。
なぜ、あの鉄舟が彼を愛したのか。
司馬遼太郎氏の本ではわかりませんでした。
清河と同郷の藤沢氏の豊かな表現が清河の悪評の誤解を解いてくれます。
早すぎたんですね。清河八郎という男の登場が・・・。
上の二作が彼の故郷・荘内ものだったのに対して、
こちらは新井白石の人生。しかしやはり市井から出た白石。
藤沢氏の愛しそうな題材ですね。
わたし、いろいろな偉人の墓にお参りしてきた「参ラ」ーですが、
白石は私が最も好きな墓のうちの一つなんです。
現在中野区の高徳寺さんに彼の墓はあります。
これもまた最後は落ちぶれたとはいえ
身分に似合わない質素な墓石なんですが、
彼の墓に従い、寄り添うかのように彼の弟子たちの墓が並んでいます。
そんな墓になった訳がこの小説で少しわかりました。
そのうち近くを通ったら、清河八郎と新井白石のお墓の写真はupしますね。