西國三十三所順打ち巡礼記

旧・元【東京】江戸御府内八十八ヶ所順打ち巡礼記【遍路】

「宇喜多の捨て嫁」(文春文庫)


宇喜多の捨て嫁 (文春文庫)

宇喜多の捨て嫁 (文春文庫)


”戦国時代の梟雄”、
宇喜多直家を描いた、
木下昌輝さんの、
衝撃のデビュー作の文庫化です。
なんと驚くべきことに、

高校生直木賞
オール讀物新人賞
舟橋聖一
咲くやこの花
歴史時代作家クラブ賞

と、五冠を受賞しました。




権謀術数により、
勢力拡大を図る、
戦国大名宇喜多直家
表題作は”捨て嫁”として、
後藤勝基に嫁がされた、
四女・於葉の視点から、
夫の敵である父を描きます。
他に五編の短編が重なる、
全六編のいずれもが、
戦国時代の備前・備中を舞台に、
宇喜多直家を取り巻く物語。
様々な視点を通し、
直家がなぜ肉親さえも信じずに、
妻子をも犠牲にして、
下克上を成り上がる、
その修羅道に至るか...。
直家の幼少時の苦難と、
不幸な才能ゆえの大罪、
妻子を守る為であった策謀、
直家を妬む主君との対決など、
”梟雄”の真の姿を浮き彫りにします。
そしてこの全六編が、
すべてつながっていることに、
読者は読み終えて気付かされます。





しかしこれがデビュー作なんて、
ホント信じられない...、
何この圧倒的な読み応えと、
止まらないリーダビリティ。
最近読んだ歴史時代小説では、
ダントツのピカイチです。




善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや。



親鸞歎異抄の一節が、
ふと脳裏に浮かびました。