「黒澤明 DVDコレクション」11『醉いどれ天使』

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黒澤明 DVDコレクション」 
→ 1『用心棒』
→ 2『七人の侍』
→ 3『赤ひげ』
→ 4『椿三十郎』
→ 5『天国と地獄』
→ 6『羅生門』
→ 7『乱』
→ 8『隠し砦の三悪人』
→ 9『生きる』
→ 10『蜘蛛巣城』



黒澤明監督作品と「スター・ウォーズ」シリーズ 
→ その一その二
→ 「黒澤明という時代」(文藝春秋)
→ DVD「羅生門」その一
→ DVD「生きる」・「赤ひげ」
→ DVD「姿三四郎」・「續姿三四郎」
→ DVD「一番美しく」
→ 「黒澤明」関連の記事






黒澤明監督作品で、
初の志村喬主演作品ですが、
同時に黒澤明三船敏郎が初めて、
コンビを組んだ作品でもあります。
元々撮影助手希望だった三船はなぜか、
この作品の前年昭和二十二(1947)の、
第1期東宝ニューフェイスに補欠採用。
同年公開の『銀嶺の果て』でデビューします。
この脚本を担当した黒澤が、
三船に惚れ込んで本作の準主役、
ヤクザの松永役に起用しました。
監督になり五年七作目の黒澤が、
「ここでやっと、これが俺だ、というものが出た」
と語る記念碑的作品。
作曲家の早坂文雄も、
この作品が初めてのコンビ作で、
悲しい場面で明るい歌を挿入する、
音と映像の「対位法」が試みられました。
あのジム・ジャームッシュが絶賛する
笠置シヅ子が歌う、
「ジャングル・ブギー」は、
黒澤明作詞・服部良一の作曲ですが
当初黒澤は「腰のぬけるほどの恋をした」
と、いう歌詞にしましたが、笠置は、
「こんなえげつないのワテ歌われへん。」
と、ごねて、やむなく、
「骨の溶けるような恋をした」と改めたとか。
闇市のオープンセットはかなり巨大なもので、
そもそもは『銀嶺の果て』よりも前に撮影された、
山本嘉次郎監督作品『新馬鹿時代』で使われたもので、
撮影順ではこれが三船の本当のデビュー作。
黒澤はこれにさらにドブ池を作り、
ホースで空気を送り込んでメタンガスに見せています。
黒澤はそもそもこの作品では、
「ヤクザ・暴力否定」の主題にしており、
ヤクザには実際にモデルがいたようですが、
医師・真田にの設定に関しては、
かなり苦労があったようで、
黒澤の小学校の同級生でもある、
脚本家・植草圭之助もかなり頭を悩ませますが、
横浜のスラム街で娼婦相手に、
中年でアルコール依存症の、
下品を絵に描いたような人間ながら、
優しい純粋な人格を持ち合わせた、
無免許婦人科医師の存在を知り、
一気に話が完成したとか。
この深い人格の演技が後年、
志村喬主演の『生きる』につながります。